【弁護士コラム・交通事故③】車を買う時には3つの対策
<はじめに>
人生で大きな買い物はいくつかありますが、多くの人が一度は買うのが車でしょう。最初は中古車を買って運転に慣れていき、徐々に乗りたい車や新車を買うようになるかと思います。新しく車を買う時は皆さん夢が膨らみますよね。オプションパーツを付けたり、車内をお洒落に飾ったりするのにお金をかけたい人は多いかと思います。
しかし、せっかく買った車が事故に遭ってしまうと夢の時間もあっという間に崩れ去ります。「車を買う時に事故のことを考えるなんて不謹慎だ!」と言う人もいるかもしれません。事故に遭っても全て自分のお金で修理・治療できる人なら何も言いませんが、そのような人は稀でしょう。
事故に遭い、弁護士に法律相談して初めて「あの時にやっておけばよかった…」と後悔する人をかなり見ています。本コラムでは、車を買う時にお勧め(個人的には必須に近いです)する対策を3つ解説します。
<対策その1:ドライブレコーダー>
車を買う時にはドライブレコーダーを付けましょう。その意義は、まさに事故映像を記録することにあります。
ドライブレコーダーが普及する前は、保険会社の専門家(アジャスターといいます)や法律家(裁判官や弁護士)が、傷の状況や塗装の具合を確認して当事者の話を聞きながらが判断していました。今もドライブレコーダーが無い車の事故ではそのような方法が行われますが、この方法では本当の事故態様がどのようなものだったかまでは分かりません(神のみぞ知る)。
例えば、あなたが運転している車が止まっている所に、加害車両がぶつかってきたとします。お互いにドライブレコーダーが無いのであれば、傷の状況や当事者の言い分によって判断するしかありません。傷の状況からすればこちら側が加害者側になることはないでしょうが、「本当にあなたの車が止まっていたのか」という点はなかなか証明が難しいでしょう。そうなると、あなたにも過失が認められる可能性も出てきてしまいます(周囲の目撃者・防犯カメラ映像等も証拠になりますが、そのような証拠が揃っている事案はそう多くはありません。)。「本当に止まっていたのに何で過失が認定されるんだ!」と怒りたくなる気持ちも分かりますが、裁判官は実際に事故を見た訳ではありません。事後的に事故態様を判断しようとするならば、客観的な証拠が必要なのです。
上記の例で言えば、ドライブレコーダーは非常に有効です。ドライブレコーダーに加害車両が映っていなかったとしても、止まっていること自体は映像を見れば明らかだからです。もちろん、双方動いている事案でも、相手方の車両がどのようにぶつかってきたのかを証明する強い証拠になります。
ドライブレコーダーは過失割合に大きな影響を与えますし、煽り運転の通報の際も役に立つので取付けをお勧めします。
<対策その2:車両保険>
対策2と3は保険なのですが、まずは車両保険です。
多くの人は任意保険会社に加入しますが、その主な目的としては対人・対物賠償だと思います。それは尤もなのですが、車両保険の加入も非常に重要です。
車両保険に入らない一番の理由としては「保険料が高くなる」という点だと思います。確かに車両保険を付けると保険料はかなり高くなるので、車の維持費がかさんでしまいます。
しかし、当たり前ですが、車両保険を付けなければ自分の保険会社から修理費用を払って貰うことはできません。加害運転手が対物賠償を使う、または、自費で修理費用を支払うことになります。
ここで注意なのが、事故を起こす運転手の中には任意保険会社に加入していない人もいるということです。自賠責保険は対人賠償のみなので、任意保険会社に加入していない加害運転手が事故を起こした場合、修理費用は全て加害運転手の自費です。
加害運転手が裕福であれば問題ありませんが、任意保険会社に加入していないような運転手はそもそも支払能力がありません。そうなると、加害運転手に修理費用を請求しても払って貰えないという事態に陥ります。非常に厳しい言い方になってしまいますが、任意保険会社に加入していないような加害運転手は他人に対する責任感がありませんので、開き直ってきたり音信不通になることが少なくありません。また、支払いに応じる姿勢があったとしても一括払いができないので、長期間の分割払いを要求してくることが多いです。「私は事故の被害者なのに泣き寝入りですか!」と言われることもあるのですが、(これもまた厳しい言い方になってしますが、)このようなリスクを回避するのが車両保険です。車両保険に入っていないのであれば、それはリスクが現実化しただけです。
車両保険に入らない一番の理由として「保険料が高くなる」ことに言及しましたが、大きな出費を避けたい人ほど車両保険に入るべきです。なぜなら、自分では払いきれないような大きな出費に備えるために、月額の保険料を少しずつ支払うのが保険だからです(車両保険に限らず全ての保険の基本です。)。物損に関して言えば、車の修理費用、もし修理不可であれば新しく車を買う必要があります。車が大破していれば修理費用が100万円を超えることもあります。また、中古車が値上がりしている現在では、自費でそれなりに状態の良い中古車を買うことがどんどん難しくなっていくかもしれません(新車と遜色ない金額になる恐れがあります。)。地方に住んでいる方は車がなければ日常生活が送れないことが多いので、地方在住で車をすぐに用意できない状況の方ほど車両保険に入る必要性が出てきます。
弁護士を付けて訴訟をしたとしても回収ができない恐れのある問題なので、車両保険は加入することをお勧めします。
<対策その3:弁護士費用特約>
最後は弁護士費用特約です。既にかなり普及している印象ですが、時々弁護士費用特約に加入していない相談者をみかけます。そのような方は、法律相談の受付時に「私は弁護士費用特約に入っていないんですけど、弁護士費用はいくらかかるんでしょうか…?」という質問をしてきます。そのような質問が出るということは、弁護士費用を払ってしまうと相手方からの賠償金額が大きく減ってしまい、修理費や治療費が赤字になってしまう方だと思われます。
示談交渉や訴訟は弁護士を付けなくても行うことができます。しかし、実際には示談段階で弁護士を入れないと提示されない賠償金の基準がありますし、裁判を弁護士を付けずに行うことも現実的に難しいです(裁判は平日の日中に行われますので、仕事を休む必要が出てくる。)。何より、事故によって心身ともに疲弊している状態で相手方保険会社や相手方弁護士とやり取りすることは大きな負担となります。
弁護士費用特約では、1回の事故につき弁護士費用を最大300万円まで補償してくれることが多いです。弁護士費用特約を使う案件では、依頼者から「弁護士費用特約の枠は300万円で足りますか?」と聞かれることが多いのですが、弁護士費用が300万円を超える場合は稀だと思ってください。「300万円を超える場合とはこのような場合です!」とお示しすることはできませんが、重大な後遺障害が残ったり死亡したりするような事故でなければ300万円の枠に収まると思ってください。また、仮にそのような悲惨な事故だったとしても、300万円まではしっかりと保険会社が支払ってくれるため弁護士費用の負担を軽減することができます。
<おわりに>
以上3つが私がお勧めしている対策です。実際に上記のような事態に遭遇した依頼者もおり、途方に暮れていたことに心を痛めました。これはあくまで私が交通事故事件を多く取り扱ってきて出した持論ですので、一般化するつもりはありませんし押し付けることもしません。
ただし、多くの人に当てはまることですし、もちろん私にも当てはまります。交通事故は自分が悪くなくても、被害を受ける不合理極まりないものです。だからこそ、不合理な状況の中でも泣き寝入りにならないような対策が必要だと考えています。