【弁護士コラム・相続④】遺留分について知ろう
<はじめに>
皆さんは、「遺留分」とは何か知っていますか?「相続分」のことではありませんよ。
弊所では相続に関する法律相談がとても多いのですが、相談者の方から「私は遺留分を貰えるはずなんですけど、どうでしょうか」というご質問をいただくことが多いです。ただし、「遺留分」という言葉を知っているだけで、その内容まで知っている人は少ないです(相続分くらいに思っている方が多いです)。
遺留分は遺産分割の時に必ずしも出てくる訳ではありませんが、その効果の大きさからすれば、ぜひ知っておくべき知識ではあります。
そこで、このコラムでは遺留分について基本的な解説をしていきます。
<遺留分とは>
遺留分とは、一定の法定相続人について、被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分をいいます。つまり、遺留分の問題が発生する場合とは、法律上取得する最低限の取り分を主張しなければならない状況だということです。
それはどのような場合かというと、被相続人による生前の贈与、遺贈または遺言によって、遺留分が脅かされている(侵害されている)場合を指します。
例えば、Aさん(被相続人)が「法定相続人に子のBとCがいるが、全財産をBに相続させる。」という内容の遺言を残して死亡したと仮定します(※相続人はBとCのみとします)。このケースであれば、Cさんは、本来、遺産全体のうち法定相続分である1/2を貰えるはずでしたが、Aさんの遺言によって何も貰えなくなってしまってしまいます。そこで、Cさんは遺留分を請求することになるのです。
遺留分は民法でその割合が決まっています。
「第1042条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一」
上記の例でいえば、CさんはAさんの子ですから、法定相続分の1/2が遺留分となります。
よって、Aさんが遺言でBさんに全ての遺産を相続させる遺言を残したとしても、Cさんは少なくとも遺産全体のうち1/4は遺留分として貰えることになります。
ここで注意なのが、遺留分は兄弟姉妹には認められていないということです。遺留分を請求できるのは被相続人の配偶者、子、子の代襲相続人、直系尊属です。
<遺留分の請求について>
遺留分は、平成30年の民法改正によって大きな変更がありました。主な変更は以下のとおりです。
元々、遺留分の請求は「遺留分減殺請求」と呼ばれ、金銭のみならず現物を返還を求めることができました。例えば、被相続人が不動産を遺贈していた場合、遺留分減殺請求によって不動産の返還を求めることができたのです。
しかし、現在では「遺留分侵害額請求」という呼び名に変わり、また、金銭の請求しかできないようになりました。
また、遺留分の請求できる生前贈与の範囲も変更されています。遺留分減殺請求では、被相続人が相続人に対して生前贈与した場合、その時期に関わらず対象とすることができました
しかし、遺留分侵害額請求では、被相続人が相続人に対して生前贈与した場合、相続開始前(被相続人死亡)の10年前しか対象となりません。
このように、改正民法は遺留分権者からすると、厳しい変更になっています。なお、相続の開始時期によって、民法の適用条文が変わってくるため、遺産分割がきちんと終了していない相続が残っている場合には、今もなお遺留分減殺請求がなされる可能性があります。
<遺留分に納得がいかない場合>
遺留分によって最低限の取り分が保障されているとはいえ、法定相続分よりも少ない金額しかもらえないのは事実ですし、納得がいかない方も多いかもしれません。
しかし、民法は、被相続人が自由に自分の財産を処分する意思を尊重しています。すなわち、被相続人は相続において“誰に何をあげる”、反対に“誰に何もあげない”ことを自由に決めることができます。
したがって、一度遺留分を侵害されるような生前の贈与、遺贈または遺言がされてしまうと、基本的には取り返しがつきません。生前の贈与、遺贈または遺言の無効や取消しを主張することもあり得ますが、それは脅迫や偽造等が発生した場合であり、そのような不正行為がなければ、遺留分を侵害された相続人は遺留分の限度で相続分を受け入れるしかありません。
遺留分を侵害されないようにする防衛策としては、日頃から被相続人との関係を良好にしつつ、他の相続人が不正行為をしないように目を光らせておくしかありません。
<さいごに>
遺留分を侵害された場合には、遺産分割協議に留まらず、遺留分侵害額(減殺)請求の調停を家庭裁判所に申し立てることも十分に考えられます。
ただし、遺留分侵害額(減殺)請求の調停では、被相続人の行った生前の贈与、遺贈または遺言の内容の有効性までは判断してくれません。例えば、被相続人の遺言が無効であると主張したいのであれば、遺言の無効確認訴訟を提起すべきです。
以上を読んでいただければ分かるとおり、遺留分はあまりポジティブな登場の仕方をしません。遺留分の請求だけでは、有利な遺産分割にはならないのが正直なところです。
逆に言えば、対立する相続人の相続分を遺留分だけにしようとすることも珍しくありません。そのために、相続開始前(被相続人の死亡前)に、相続人間で様々な争いが繰り広げられることもありますので注意が必要です。このように、遺留分はこのコラムには書ききれないほど難しい問題があります。
相続でお悩みの天白区や緑区、名古屋市近郊(豊明市、東海市、大府市)の方は、ぜひ弊所までご相談いただければと思います。