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2025/12/16

【弁護士コラム・離婚③】養育費の増額・減額について

【弁護士コラム・離婚③】養育費の増額・減額について

 

<はじめに>

 離婚をする際、夫婦間に子がいれば養育費を決めることになります。協議離婚の場合で、夫婦で話し合いができるのであれば、養育費の金額は自由に設定することができます。

 他方、夫婦での話し合いができない、話し合いをしてもまとまらない場合には、養育費請求調停(調停がまとまらない場合には審判)で金額を決めることになります。養育費の金額は、夫婦双方の収入で決めることになっており、家庭裁判所における金額の算定表があります。家庭裁判所は、特段の事情がない限り、算定表に基づいて金額を算出します。

 一度決まった養育費の金額を後から変えることはできるでしょうか。

 結論から言うと、養育費の金額は後から変更することができます。本コラムでは、養育費の増額・減額について基本的な知識を解説していきます。

 

<養育費増額調停、減額調停>

 家庭裁判所の調停は、養育費そのものを請求する場面だけではなく、一度決まった金額を増額したり減額するような場面でも利用できます。

 民法第880条では扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。」と定められており、扶養にかかる事情変更があった場合には養育費の金額を変更することができます。

 もっとも、養育費の増額・減額が認められるには、単に扶養の事情に変更があっただけでは足りません。

 まず、養育費算定の基礎となった扶養の事情の変更が、養育費を決めた当時に予測できなかったことが必要となります。なぜなら、予測可能(または、かなり近い将来に確実に起こる事情など)は、養育費を決める際に考慮すべきと考えられるからです。そのため、養育費の金額が決まった後すぐに養育費増額・減額の調停申し立てることはできません。

 次に、一度決めた養育費を今後も維持することが、当事者にとって不相当といえるほど重要な事情の変更であることが必要となります。養育費の金額は、当事者双方にとって相当な金額を定めているのが通常であり(すなわち、支払う側は今後ずっと支払うことができる金額であるし、受け取る側としても子が生活する上で必要最低限の金額であるはず。)、多少の事情変更が起きたとしても、それは決められた金額内で想定されているはずと考えられているからです。

 それでは、どのような場合に養育費の増額・減額ができるのでしょうか。

 

<増額の典型例>

 養育費を増額できるのは、義務者(養育費を支払う側)の収入が大幅に上がる、または、権利者(養育費を受け取る側)の収入が大幅に下がる場合です。

 よくあるのは、養育費を決めた当時サラリーマンだった義務者が、その後に転職や独立をして年収が大きく上がったというケースです。このような場合、権利者が義務者に対して養育費の増額調停をします。

 なお、上記で挙げた予測可能性や不相当性の要件からすれば、年功序列の出世に伴い徐々に年収が増えた程度では養育費の増額が認められない場合があります。

 

<減額の典型例>

 養育費を減額できるのは、義務者(養育費を支払う側)の収入が大幅に下がる、または、権利者(養育費を受け取る側)の収入が上がる場合、そして、子が養子縁組をした場合です。

 よくあるのは、権利者が再婚し、子と再婚相手が養子縁組するケースです。このような場合、義務者が権利者に対して養育費減額(正確には、扶養の第一次的義務者が再婚相手になり、現在の義務者は養育費の支払義務を免れることができる。)の調停をします。

 なお、子が再婚相手と養子縁組をしているかは外から見ただけでは分かりません。子の戸籍を取り付けて、子が再婚相手の戸籍に入っているかを確認する必要があります。なお、権利者が再婚したとしても、子と再婚相手が養子縁組をしていない場合には養育費の減額をすることはできません。

 

<改正民法による法定養育費について>

 令和6年5月の民法改正では、養育費に関しても大きな変更がありました。それは法定養育費です。離婚時に両親が養育費の金額や支払時期等の協議をしていなくても、子の監護親は、非監護親に対して、養育費を請求することができるようになりました。さらに、法定養育費の未払がある場合、子の監護親は非監護親の財産について差押えをすることができます。

 法定養育費の額は、月額2万0000円と決められました。金額が低いという批判もありますが、法定養育費はあくまでも養育費の取決めをするまでの暫定的・補充的なものであり、両親できちんと協議をして金額を決めるべきであるという考えに基づいています。そのため、法定養育費が導入されたとしても、監護親は何もしなくても良い訳ではありませんし、改正民法施行後も養育費請求調停の存在意義は何ら変わりません。

 

<おわりに>

 子の生活の安定を考えると養育費減額の調停は理由なく安易に行われるべきものではありませんが、転職、リスキリングや副業が活発になっている社会情勢を考えると、権利者が収入を上げることも十分に可能であり養育費の金額を減額することもあり得ます。同様に、義務者が転職、リスキリングや副業によって収入を上げていれば、養育費の金額を増額事由になります。

 物価高、終身雇用制度の崩壊、女性の社会進出といった情勢の変化に柔軟に対応していくためには、養育費の増額・減額調停を活用していくことが必要なのではないかと思います。

 

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