③相続開始した後すぐにやっておくべき手続
<はじめに>
今回は“相続開始後すぐにやっておくべき手続”というテーマです。
相続人は、相続が開始した後(被相続人が死亡した時)、葬式やお墓の準備等でとても忙しい日々を過ごすかと思います。そのため、法的な手続はどうしても後回しになってしまいがちです。それに加え、遺産分割でトラブルが発生すればさらに手間が増えてしまい、何から手を付けたらよいか分からなくなってしまいます。
相続が開始した後にやっておくべき手続の中でも、私が相続事件を受けている中で、特にやっておいた方が良いものをピックアップしていますので、ぜひ参考にしてください。
<遺言の有無を確認する>
まず、最初にやるべきこととしては、被相続人が遺言を残していないか確認することです。
自筆証書遺言を自宅に保管している場合、公正証書遺言が作成されており公証役場に保管されている場合、自筆証書遺言ではあるが法務局の遺言書保管制度によって法務局に預けられている場合が考えられます。まず、公証役場や法務局に問合せをして遺言が保管されていないか確認をします。次に、自宅に自筆証書遺言が残されていないかもしっかりと確認をしてください。知人や親族が遺言を預かっているというケースも稀に見かけるので、被相続人が亡くなった時には、速やかに周知をした方がよいでしょう。
もし遺言が見つかったとしても、その場で封を開けてはいけません。発見した遺言は、相続人が家庭裁判所で検認という手続を遅滞なく行う必要があります。検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です(民法1004条1項)。封がされている遺言については、検認をせずに開封してしまうと、過料の対象となる恐れがあります(民法1005条)。
<金融機関に対する相続の届け出>
私が個人的にやっておいた方が良いと考えるのは、金融機関に対する相続の届け出です。
預貯金は遺産として残っていることが多いですし、金額も高額になりがちですので、預貯金の残高がどれくらいあるのか早期に確認することはとても重要です。また、多額の相続税が発生するような相続の場合、不動産等の固定資産は売却に時間がかかることが多いので、預貯金を先に出金して相続税の納付に充てることもあります。そのため、預貯金をスムーズに出金することができる状態にするためにも相続の届け出は重要です。
しかし、私がこれまで担当してきた相続事件で、金融機関に対する相続の届け出がされていない事案を多くみかけます。金融機関に対する相続の届け出がされていないまま相続人間で遺産分割のトラブルになってしまうと、預金の取引履歴や残高証明を取得することができず、遺産の調査に支障をきたします。また、無事に遺産分割協議が成立したとしてもスムーズに預貯金の出金をすることができず、各相続人が預貯金を取得する時期が遅れてしまいます。
<名寄帳の取得>
遺産に不動産が多く含まれている事案では、相続人も知らないような不動産が存在していることもあります。親から何も不動産について知らされていないような事案では、相続人が自力で遺産となる不動産を全て見つけることは困難です。
そこで、役に立つのが名寄帳です。名寄帳は市町村が発行する書類で所有者、所在地、面積等の情報が記載されています。名寄帳を取り付けることで被相続人が所有している不動産を網羅的に把握することができます。なお、固定資産税評価証明書も遺産となる不動産を探すのに有益な書類ではありますが、固定資産税がかかる不動産しか記載されていませんので、固定資産税がかかっていない不動産が漏れている可能性があります。
<被相続人の戸籍の取得>
相続が発生した場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を要求される場面は非常に多いです。結婚や離婚、養子縁組によって戸籍が頻繁に変わっている場合、思いがけないような親族関係が判明することもあり得ます。相続の手続の際には、基本的に共同相続人全員の同意が必要です。そのため、早期に共同相続人の人数を確定しておくことは非常に重要です。
<預金口座の取引履歴の確認>
相続の相談を受けていると、相談者が遺産の状況を全く把握していないケースは意外と多いです。そもそも親と仲が悪く連絡を取っていなかったり、遠方でなかなか状況を確認できないということもあるかと思います。
遺産分割協議の際にトラブルになるケースとして挙げられるのは、「他の相続人(多くは兄弟姉妹)が実家に近づくことができないようにし、親の財産を全て管理していた」というものです。遺産の使い込みを追及する際には、必ずと言っていいほど「被相続人のために使用したんだ」という反論が来ます。確かに、被相続人の日常生活にかかる費用や医療費・介護費等に使用したのであれば正当な支出に当たります。ただし、被相続人の日常生活にかかる費用や医療費・介護費等に使用したという客観的な証拠がなければそのような反論が認められる可能性は低いです。そもそも、このようなトラブルに発展している時点で相当な金額が引き出されていることが多く、被相続人が生活する上で必要な金額を大幅に超えているのであれば、被相続人のために使用した以外に相続人が自己の利益のために使用したと考えるのが自然でしょう。したがって、遺産の使い込みをしたと疑われる相続人に対しては、使途やその証拠を開示するよう要求することになります。
<相続人が使い込みを認めるかどうかで対応が変わってくる>
対処法については、当該相続人が遺産の使い込みを認めるかどうかで対応が変わってきます。
遺産の使い込みを認めているのであれば、使い込んだ遺産を遺産分割協議の中で処理すれば足ります。
民法第906条の2第1項は、「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」と定めています。遺産分割協議書に“使い込んだ遺産を遺産分割時に存在するものとみなす”という条項を入れた上で、使い込みをした相続人の相続分から使い込んだ遺産の金額を控除すれば問題ないでしょう。
他方、遺産の使い込みを認めていないのであれば、遺産分割協議の前に民事訴訟を提起し、使い込みをした遺産の金額分の金銭を請求することになります。
不当利得(民法703条)または不法行為(民法709条)に基づいて、使い込みをした遺産の金額を請求することになります。ここで注意なのは、被相続人の生前に遺産の使い込みがあった場合、返還請求権または損害賠償請求権を有しているのは被相続人であり、相続開始後は共同相続人に返還請求権または損害賠償請求権が相続されているという点です。民法上、金銭債権のうち損害賠償請求権は可分債権と解され、相続と同時に分割されます。
例えば、1000万円の使い込みがあり共同相続人が2人という場合、各相続人は500万円ずつの損害賠償請求権を相続したことになります。そのため、使い込みをした相続人に請求する金額としては500万円ということになります。なお、使い込みをした相続人が相続した残りの損害賠償請求権500万円については、民法520条に混同によって消滅します。そして、無事に500万円を回収できた場合には請求をした相続人がそのまま取得することになります。
遺産の使い込みは、相続の相談を受けていると一定見かけます。遺産の使い込みが疑われる事案では、兄弟間の仲が非常に悪く、遺産分割協議も円滑に進まないことが多いです。このような事案の場合には当事者だけで解決することはかなり難しいので、早めに弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
<おわりに>
上記の手続については必ずしも相続人が行わなければならない訳ではなく、弁護士に相続事件を依頼して手続を代理してもらうことも可能です。
“葬式やお墓の準備等で忙しい”、“遺産分割の手続はよく分からないし、トラブルにしたくない”といった理由で法的な手続はどうしても後回しになってしまいがちです。
相続事件でお悩みの天白区や緑区、名古屋市近郊(豊明市、東海市、大府市)の方は、ぜひ弊所までご相談いただければと思います。