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2026/02/03

【弁護士コラム・企業法務③】問題のある社員を懲戒解雇したい

②問題のある社員を懲戒解雇したい

 

<はじめに>

 事業主から相談を受けていると「問題のある社員が居るが、何度注意しても一向に直らない。もうクビにしたい。」というお悩みは多いです。

 「社員を解雇するのは難しい」というのは社会常識ではありますが、難しい理由を理解している経営者は実は少ないです。特に、懲戒解雇については踏むべき手順が多くあり、また、それらの手順に問題があると懲戒解雇は無効になってしまいます。

 相談を受けても「この事案では懲戒解雇はできません」と回答せざるを得ないケースは多く、その原因の多くは事前の準備不足です。

 このコラムでは、懲戒解雇に関して基本的な解説をするとともに、会社として事前に準備しておくべきことを紹介します。

 

<就業規則は必須>

 まず、大前提として、懲戒解雇をするには会社に就業規則がなければなりません。そして、「この事案では懲戒解雇はできません」と回答せざるを得ないケースの大半は、零細企業で就業規則が無いというものです。

 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し行政官庁に届け出なければならない(労働基準法89条1項)とされています。逆を言えば、常時10人未満の労働者を使用する場合には、就業規則を作成する義務はないということです。そのため、労働者数名の零細企業では、就業規則が作成されていないことも珍しい訳ではありません。

 懲戒解雇を含む懲戒処分をするには、就業規則が作成されており、その就業規則が社員に周知されおり、その内容が合理的であることが必要です。また、懲戒処分はあらかじめ就業規則で懲戒事由と処分の種類を定めておく必要もあります。

 よって、就業規則が無い企業では懲戒解雇はまずできないと考えてください。

 

<安易な懲戒解雇は無効になる>

 会社がきちんと就業規則を定めており、とある問題社員が無断欠勤したとします。無断欠勤は就業規則に定める懲戒事由に当たるところ、会社は当該問題を懲戒解雇することができるのでしょうか。

 結論として、この場合懲戒解雇は無効になる可能性が高いです。

 確かに無断欠勤は就業規則の懲戒事由に当たりますが、懲戒事由に当たれば会社が無制限に処分を決めて良い訳ではありません。懲戒処分は、労働者の懲戒事由の程度や内容を考慮して、相当なものでなければならない(相当性)のであり、相当性がない懲戒処分は権利濫用として無効になります。無断欠勤が数日程度であれば、懲戒処分としては戒告・けん責で終わらせることが多いです。

 よって、懲戒解雇をするのであれば、会社を辞めさせなければならない程の重大な過ち(ex.経歴詐称、横領など)でなければなりません。

 

<懲戒処分をする際の手続を遵守する>

 就業規則で、懲戒処分を行う際には懲罰委員会の弁明聴取や、労働組合との協議をしなければならないことが定められていることがあります。特に、懲戒解雇は、労働者としての地位に関わる処分ですから形式的な面談では不十分です。労働者側の言い分をしっかりと聴取し、会社として事実関係を調査して解雇が相当であるかを慎重に検討する必要があります。

 そのため、懲戒処分をするための流れや手続を会社としてしっかりと決めておく必要があります。

 

<会社として準備しておくべきこと>

 会社として準備しておくべきこととしては、就業規則が無い会社は直ちに就業規則を作成・届け出をしてください。

 就業規則を作成した後、既に就業規則を作成されている会社の場合、就業規則を社員全員に周知させるとともに、人事(懲罰委員会)に懲戒処分に関わる手続の教育を行います。代表者や役員も、懲戒解雇に関する他社の事例をしっかりと調べて懲戒解雇が相当になる相場を把握してください。

 

<おわりに>

 懲戒解雇は、労働者を保護する労働法において比較的無効に傾きやすいと言えます。もちろん会社として手続を遵守し、問題社員に対する処分として相当なのであれば有効になりますが、無知や不慣れによって解雇が無効になってしまうリスクは常にあります。問題社員を雇わないように採用の時点で気を付けるべきではありますが、面接では分からないことや、実際に一緒に働いてみてから分かることも多いと思います。問題社員を一日でも辞めさせたいという気持ちが逸ってしまい、強引な懲戒解雇をしてしまっては意味がありません。

 懲戒解雇を検討していて分からないことや、難しい場面が出て来た場合には弁護士への早めの相談をお勧めします。

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